Googleが提唱する「マイクロモーメント」について最新情報をまとめました。「パルス消費」といった新しい消費行動についても整理。マイクロモーメント提唱から5年ほど経ったので、その後の動向を事例と合わせて紹介します。
※2016年に書いた記事にアクセスがあるため、今一度最新の動向を本記事にまとめています
Googleが提唱するマイクロモーメント
マイクロモーメントとは、Googleが提唱する人々の新たな消費行動についての考え方です。
日本でこの概念が最初に取り上げられたのは、2016年11月のThink with Googleにおける森島氏の記事が最初だと思われます。
「マイクロモーメント」とは、人々が「何かをしたい」と思い、反射的に目の前にあるデバイスで調べたり、購入したりという行動を起こす瞬間です。 マイクロモーメントを的確に「見極め」、生活者が求めている情報を「届け」、そして効果を正しく「測定」すればモバイルが生み出す価値を最大化することができます。
この概念が登場した背景として、スマートフォンによるモバイル経由のトラフィックが2010年代から急激に伸びたことがあげられます。
従来、インターネットを通じた購買行動はPCが主であり、ユーザーはWebサイトを回遊しながら徐々に自分の買いたいものを見定め、購入するというプロセスを経てきました。
しかし、スマートフォンの登場により、何気なくアプリやブラウザを使う中で、そこに現れた情報を見た「瞬間」に「買いたい」「欲しい」という動機が発生し、そのまま購買行動につながることが増えました。これがマイクロモーメント的なユーザー行動だと言えるでしょう。
リビングや職場でしかPCを介してWebにアクセスできなかったものが、常にスマホを持ち歩くこよによってベッドや電車など場所を問わずアクセスできる状況にあることから、そういった瞬間や接点が急激に増えたのでしょうか。
パルス消費という類似概念
ちなみに、Googleによる2019年2月の記事では、「パルス消費」という消費行動が新たに提示されています。
日経クロストレンドの記事によると、パルス消費とは「スマホを操作中に瞬間的に物が買いたくなり、商品を見つけ、購入まで終わらせる消費行動」のことを指します。これまでAIDMAモデルが段階的にプロセスを経ていく行動だったものに対し、一気に認知から行動までに至るプロセスに変化してきたことからパルス消費と名付けられています。
マイクロモーメントの事例
この概念が登場して5年ほど経ちますが、事例としては消費者向けメーカーのものが多いように感じます。
BtoCの事例
2016年ごろの事例としては、ナイキやスタバ、ゴルフダイジェストオンラインの事例が取り上げられていました。
UXやコンテンツマーケティングの文脈でマイクロモーメントが語られ、ユーザーとの接点をさまざまなチャネルで構築し、エンゲージメントを上げた状態でユーザーがいつでも買える、買いたい時に買いたくなる仕組みを設けている、といったところでしょうか。
また、2017年3月のThink with Googleの記事では「夜」という時間帯に着目されています。
不動産サービスのHOME’Sや、証券サービスのDMM.com 証券のサイトは、19~20時をすぎるとアクセスが大きく伸びるという傾向がデータで明らかになりました。
記事では、アクセスの伸びに対し広告のインプレッションも最適化してあげることで、よりパフォーマンスを改善することができると指摘しています。
マイクロモーメントについては、コンテンツマーケティングやSEOを展開する企業でも取り上げられることが多く、ユーザーのマイクロモーメント的な検索意図に対応する形で、検索クエリを分類、仮説立てることでコンテンツの接点を増やしていくことが提案されています。
「Amazon Dash Button」という実験
余談ですが「Amazon Dash Button」はマイクロモーメントを捉えようとしたO2O的な取り組みだったといえるでしょう。
2015年にスタートしたダッシュボタンは、4年後の2019円2月をもって販売を終了します。
ビジネスインサイダーの記事によると、思想は同じだが「ユーザー簡単に買えること」を中心にコミュニケーション方法を考えた結果、ボタンではなくAmazon Echoなどのスマートディスプレイ、スピーカーの一要素として「溶け込んでいった」のだと説明されています。
BtoBビジネスにおいてマイクロモーメントは作用するのか?
Webで調べる限りはマイクロモーメントを標榜した事例は見つけることができませんでした。
マイクロモーメントという概念はBtoBビジネスでも作用するのか?といった場合に、MQLを獲得するためのコミュニケーションがそれにあたると言えるのではないでしょうか。
一方で、最終的な決済者に対するコミュニケーションはそのプロセスの延長線上にあるとも言えます。あくまで担当者レベルでの情報収集、問い合わせといったプロセスがマイクロモーメントを捉えるポイントなのかもしれません。
マイクロモーメントが「あたりまえ」の社会になりつつある
2021年現在の状況を鑑みると、モバイルデバイスがこれまで以上に普及し、スマートフォンだけでなくウェアラブルデバイス、スマートスピーカーといった形で生活の中で「何かをしたいときに提案 or 答えてくれる」ものが根付いてきたように思います。
また決済手段としてのキャッシュレス化が推し進められたことで「オートチャージ」という概念も当たり前になってきました。何もしなくてもお金がチャージされることで、これまで入金というプロセスがなくなり、ユーザーは即時的な行動どころか、何も考えなくても足りないものが満たされる状態になっています。
またダイナミックプライシングの登場で「今が買い時」ということがユーザーに対してレコメンドされることも増えています。これらの要因により、私たちの購買行動は2016年時点よりもさらに「今買いなさい、と急かされている」のかもしれませんね。
消費行動に関する関連書籍
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